監督署が来るのはどんなとき?

「すみません、〇〇労働基準監督署ですが」

事前アポもなく、監督署から突然監督官がやってくることがあります。

急に来たと言われて、平然としていられる人はどれだけいるでしょうか?
別にやましいことが何もなくてもドキドキしてしまいますよね。

もし、普段からちょっと気になるけど後回しにしていることなんかがあると、
ドキドキはさらに激しくなるでしょう。

監督署調査の種類

①定期監督 一般的な調査 その年の監督計画に沿って労働基準監督署が任意に会社を選び、調査をします。
監督計画ではその年に重点的に確認する業種や調査項目などが決められています。
事前に電話などで日程調整の相談がある場合もあります。
②申告監督 労働者の申告による調査 いわゆる「監督署に駆け込んだ」という状態です。そこで話された内容をもとに調査をされます。
この時、監督官は申告したのが誰かは教えてくれません。確認されるのは申告者だけではなく、他の人も含めての調査となります。
定期監督をしばらく受けていない会社だと同時に定期監督をされることもあります。
③災害時監督 労災事故が発生した際の調査 事故があった現場や機械、状況を調査し、事故の原因や再発防止の指導を行うことを目的として監督されます。
申告監督と同様にこちらの場合もそのまま定期監督されることがあります。
④再監督 一度監督したところの再調査 一度監督を行ったが、その後の報告がない。対応に問題があるといったケースで再度監督が実施されることがあります。

調査をする監督官とは?

労働基準監督官は国家公務員です。
労働基準法やその他の法律により権限が決められています。

その権限は非常に強く、会社に対して強制的に立ち入って調査する権限があります。
法律違反があれば逮捕、取り調べ、送検することもできます。

「まるで警察じゃないか!」と思いますが、正解です。
労働基準監督官は「特別司法警察職員」としての権限をもっています。
この権限は一般司法警察職員である警察官と同じです。

調査の流れ

監督官が会社にきて、調査が始まると実際にどのようなことをされるのか気になりますよね。


(出典:厚生労働省労働基準局「労働基準監督行政について」資料2 P.4)

確認内容

定期監督 労働時間、賃金、労働条件、年次有給休暇、安全管理、健康管理について確認されます。
申告監督 特に申告内容にかかわるところを重点的に調査して、申告内容が正しいのかどうかを確認されます。
災害時監督 現場の確認やその後の再発防止策をどうしているかを確認されます。

定期監督の場合は、事前に資料を準備するよう言われることもあります。
急に来た場合は、その場で資料を見せる必要があります。

調査の例

[労働時間の調査]

・出勤簿、タイムカード
時間外労働などが36協定の範囲内か。
・36協定、会社カレンダー
労働時間の管理方法は適切か。

[賃金の調査]

・賃金台帳
最低賃金以下になっていないか。
・就業規則、賃金規定
未払いの残業代がないか。

[労働条件の調査]

・雇用契約書、
 労働条件通知書
労働条件に法違反はないか。
・就業規則、賃金規定
就業規則等は正しく届出や周知がされているか。

[年次有給休暇の調査]

・有休管理表
年5日取得ができているか。
・就業規則
有給管理がなされているか。

[安全管理の調査]

・安全管理者等の選任届
・衛生委員会等の議事録
法で定められた管理者の選任や委員会の実施は行われているか。


[健康管理の調査]

・ストレスチェック実施記録
・健康診断実施記録
ストレスチェックや健康診断の実施と、その後の措置が行われ
ているか。

是正勧告と指導票

調査が一通り終わると、「是正勧告書」や「指導票」「使用停止等命令書」が交付されます。

是正勧告書 法違反あり ⇒ 改善が必須です。
指導票 法違反なし ⇒ 対応方法は様々。場合によっては対応しないことも…。
使用停止等命令書 設備や機械に不具合があり、緊急を要すると判断  ⇒ 対応するまで使用禁止。破ると罰則あり。

対応はどうすればいい?

是正勧告書や指導票を交付された場合には

改善すべき内容と期限が書かれています。
その内容に対して会社内で対応方法を考え、対応できたら監督署に報告書を提出します。

この報告書には記載された是正勧告に対していつ・どのような対応をしたかを記載します。場合によってはその対応を裏付ける書類を添付します。

例)健康診断が実施できていないことに対しての是正勧告
是正報告内容:〇月〇日に健康診断を実施したことを健康診断結果のコピーを添付して監督署に提出する。

使用停止等命令があった場合には

監督官が報告書の内容を確認して問題なければ、使用停止命令が解除されて使用できるようになります。

報告書の提出は、指摘されたことすべてを一度に報告しないといけないわけではありません。一つずつ作成することも可能です。

どうしても期日までに是正ができない場合やどうしていいのかわからない場合には監督官に相談してみましょう。

すべて終わった…と油断は禁物!!

是正勧告や指導票に対応して報告書を提出し、監督官からもこれで問題ないとOKをもらって一安心…とならないこともあります。

一度監督を受けて違反があった場合には再度監督署が来ることがあります。

  • 報告書では改善したとしているが実際には全く対応していない。
  • 報告したときは改善したが、また元の状態に戻っている(=違法な状態になっている)。

なんてことがあると非常に厳しく指導される恐れがあります。

報告書を作成する段階で確実に実施し、出来ないことを書かないようにしましょう。

誠実な対応を!

監督署が来て調査をされ、指摘をされて直す…。
会社側からすると面倒くさいというのが本心ではないでしょうか。

指摘事項には対応しないといけない。指摘されることは対応が難しいこともある。
それなら、最初から書類をちょっと触って問題がないようにしておけば対応にも時間がかからないですよね!!!

これは、最悪の対応です。

当たり前ですが、書類の偽造は犯罪です。
そもそも、監督官の質問に対して嘘を答えると罰則があります。
思い出してください。監督官は司法警察なので捜査も逮捕もできるのです。

労働基準監督官も人です。
もしもあなたが監督官なら、調査に行った先の会社の人が横柄な態度で挑発するような言動をとり、資料を隠したり、偽装したものを見せてきたらどうでしょう?

勘違いされている方がいますが、監督官は会社を潰そうとしているわけではありません。
従業員の味方というわけでもありませんが、会社の味方でもありません。
あくまで中立の立場にいる人です。

監督官はどちらかに肩入れするのではなく両方の話を聞いた上で判断されます。
実際に何度も対応をしてきた経験から、そう感じます。

対応する際にはできていないことは正直にできていないと言えるようにしましょう。

専門家に相談を

そうは言っても監督署調査にはなかなか慣れないでしょう。
監督官に相談すればいいと言われても何を相談していいのかもわからない。

あまりにも正直に話すのも…と思われる場合は、社会保険労務士に依頼するのも一つの手です。

すべて監督官の言う通りにすれば問題なく終わります。
しかし、会社として主張すべきことは主張しないといけません。

また、是正勧告の指摘内容について疑問が残ることもあるでしょう。
場合によっては監督官が認識を誤っていることもあります。

そのような点を確認するにはある程度の専門知識が必要です。
特に、指導票は法違反ではないことの改善指導なので対応が非常に幅広く考えられます。

是正勧告より対応に苦慮することもよくあります。
そのような対応に慣れている社会保険労務士に依頼できれば、心強い味方となってくれるでしょう。

ただし、違法なことをなかったことにはできないのでその点はお間違いなく!

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